風と音の源へ 尾崎元海
虫の声楽家の夏のセミが鳴き止み、
秋の気配を感じさせる風の囁き(ささやき)が、
そこかしこから忍びよってくる。
夏から秋に季節が移りゆくと、
虫の提琴家(ていきんか)のコオロギたちの活躍となり、
夏の間の心と体の疲れを
その涼やかなリズムで浄めて下さる。
風と音の持つ不思議な働きは、
一体どこからくるのだろう。
我々人間に何のメッセージを
伝えようとしているのか。
自然界の風と音に心の耳を傾けていけば、
人は自然に自己の本源たる、
生命の源に戻ってゆくことが出来るのだ。
この大いなる仕組みを考えられた、
大神様の御心の広大且(か)つ妙々なる
お計らいの面白味を実感する喜び。
五感を磨き高め上げてゆけば、
無音の音(ね)が感じられ、
やがて自己と宇宙とが一つである、
光明世界の本源の美の世界に帰りつく。
(風韻誌2009年9月号 収録)